前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』 若きバッタ学者のアフリカ奮闘記!!
サバクトビバッタを研究している「バッタ博士」こと前野ウルド浩太郎さんの著作『バッタを倒しにアフリカへ』。
表向きは、「アフリカでのバッタ研究の話」ですが、筆者のユーモア溢れる文才が凄まじく、現地での奮闘の様子がブログ調で面白おかしくつづられています。
バッタに関心がなくとも一気に読めてしまう、読書を引き込むそんな魅力が本書にはあります。中でも特にクスリとさせられた名言を集めてみました。さっそく行きましょ〜
作品情報
『バッタを倒しにアフリカへ』
作者:前野ウルド浩太郎
出版社:光文社
出版年:2017/05/17
100万人の群衆の中から、この本の著者を簡単に見つけ出す方法がある。まずは、空が真っ黒になるほどのバッタの大群を、人々に向けて飛ばしていただきたい。人々はさぞかし血相を変えて逃げ出すことだろう。その狂乱の中、逃げ惑う人々の反対方向へと一人駆けていく、やけに興奮している全身緑色の男が著者である。
(「まえがき」より)
内容紹介
モーリタニアでの移動手段については、研究所が所有する四輪駆動のランドクルーザーを自由に使ってもよいと便宜を図ってもらった。普通なら一日5000円の使用料がかかるところ、貧乏ポスドク(ポスト・ドクター・博士の後という意味)なので無料で貸してもらえることになった。2003年にバッタが大量発生した際に、日本からの支援金で購入したトヨタの車だ。思わぬ形で日本政府の恩恵に与る。ジープタイプで車高が高く助手席からの眺めは抜群にいいが、窓には意味深なヒビが入っている。誰しも暗い過去の一つや二つは持っているものだ。そっとしておこう。
(「第1章 サハラに青春をかける」より)
☆
ババ所長から現地通貨を借りて、さっそく生活物資の買い出しに街に繰り出す。スーツ姿で現れたティジャニはスピード狂だった。目の前に立ちはだかる遅い車には、容赦なくクラクションを浴びせ、モーゼのごとく進路を切り開いていく。自分の体の一部のように車を巧みに操り、混雑した道もなんのその。ただ、行き先はなぜか中華料理屋だった。早く買い物をしたかったのだが……。
(「第1章 サハラに青春をかける」より)
☆
日本では、太っていると自己管理がなっていないととられがちだが、こちら(モーリタニア)では「太っている=お金持ち」となる。自分の妻が痩せていると旦那は甲斐性なしと思われるので、妻を太らせるために気を遣うそうだ。このような文化的背景が異性に対する好みに働きかけ、いつしか男性は太っている女性に美を感じるようになっていったのだろう。
ティジャニも、ドライブ中に体格が良すぎる女性を発見すると、度を超えた脇見運転をし、唸り声をあげる。
(第5章「聖地でのあがき」より)
☆
現に全てのミッションで、運転中に彼が休息を取りたいと訴えてきたの腹を壊していたときくらいで、それ以外は疲れをおくびにも出さない。運転において一切の妥協を許さない高きプライドを持つ音速の貴公子こそ、ティジャニなのだ。
(第6章「地雷の海を越えて」より)
さらに肉入りの炊き込みご飯が出てきた。皆は相変わらず手づかみだが、炊きたてのご飯は殺人的な熱さのため、私は手が出せない。物欲しそうな顔で見つめていると、スプーンを貸してくれた。油でギトギトの手でスプーンをにぎり、肉飯を口に運ぶ。白いご飯が欲しくなるほど濃厚な炊き込みご飯だ。
(第1章「サハラに青春をかける」より)
元々は微糖派だったが、朝飯初日、手元に砂糖がなかったのでブラックで飲んだところ、ティジャニが「コーヒーに砂糖を入れずに飲むなんて信じられない」と尊敬の眼差しで私を拝んできた。なので、その日以降、大人の威厳を見せつけるために、コーヒーはブラックで飲むことにした。
(第2章「アフリカに染まる」より)
(前略)日本語を流暢にしゃべれなくなっていた。知らぬ間に、アフリカ生活は私から日本語を奪っていた。ただでさえ東北訛りで標準語に不慣れなので、怪しい日本語でトークする(書くほうにも支障をきたしており、別の機会にサインしたときは、「え」と「ん」を書き間違えた。よりによって、それが平仮名で「ちえこ」さんだったため、大惨事になった)。
(第7章「彷徨える博士」より)
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CODY
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